2010年8月11日
独身寮の入口まで来て、ふと足を止めた。
エーテルランプが煌々と闇を照らしていた。左手には防衛隊の本部が見えた。
僕が足を踏み入れることは滅多にないけど。教官や隊長がいるところ、くらいの認識だ。
門構えは立派だが、二柱神の落し物による傷や、襲撃の際のひび割れなどはそのまま残っていたため、ひどく傷んでいるように思えた。

コロニー9の防衛隊に志願した理由は、全くもって単純明快だった。
僕の心はあの人で埋め尽くされていた。
家を離れる理由にもなったし、ほかにやりたいこともなかった。

機械の扱いは上手くなかったので、遊撃隊として配属された。遊撃隊とは名ばかりの、ていのいい試用期間だ。ここで使い物になるまでしごかれ、やがては正規兵として各部隊へ配属が決まる。規律は多少面倒に感じたが、毎日退屈はしなかった。

だいたい週に一度、機神界から偵察機がやってくる。偵察する気があるのかないのか、白昼堂々とやってきては僕たちに袋叩きにされ、スクラップになる。
機神兵と言えども偵察機なので、武装はたかが知れていた。普通の刃が通りにくいことが幸いし、それはとても質の良いサンドバッグになった。

ふよふよ浮かんでは動き、偵察機たちはまるで僕たちを挑発しているかのようだった。それもあって、偵察機の破壊は僕たちの大事な業務、兼、ストレス発散の場となっていた。
機神界から見たら、僕たちはなんて残虐で野蛮な民族に映るだろう。

だからと言ってやめるつもりはないけど。こんな楽しいこと。

「ムムカ」

「きょ、教官!」

心を読まれたような気がして、急にあらたまってしまった。

「さっきから何やってる。さっさと中へ入ったらどうだ。」

「承知しました。では、失礼します!」

かなりおかしな様子に見えただろうか。
というかどこから見てたのだろう。ゾード教官もまったく人が悪い。

「ああそれと―」

気にはなったが、背中で聞き流した。

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