1
やっと、見つけた…
「ナル…ト…?」
彼から預かったチャクラ刀を思わず強く握りしめた。
夢に現れた英雄がロウランを救ったなんて嘘。
あなたが私を救ってくれたんだよね。
ミナトさんの術で記憶を失ったなんて嘘。
全部言いたい。
でも、あなたは知らないね。
忘れちゃったもんね。
「?」
「このあたりで龍脈の乱れを感じました…。我々一族は龍脈の流れを感じる事が出来るんです。」
「へーーーーw姉ちゃんってばすげえってばよw」
姉ちゃん、かあ。20年前は私と同い年くらいだったのにね。
「なぁにデレデレしてんのっ…よっ!!」
「んぐッ」
「少し…昔話をしてもよろしいですか…?」
少しむせながら彼は頷いた。
「お、おう」
「むかしむかしのお話です。まだロウランが栄えていたときのお話。」
私は懐かしくてついついチャクラ刀を撫でていた。
「あれ?その刀…」
彼はしきりに腰のあたりを探していた。
その刀はここですよ、と言いたい。
大事に研ぎ過ぎて、相当小さくなっちゃったけれど。
私は彼に気づかれないよう、柄に刻まれた木の葉の紋を隠した。
2
「さて…君も記憶を消さねばならないね」
「あの…、待って下さい」
「…?」
言わなきゃ、今、言わなきゃ。
「私は女王です。このロウランを復興させる責務があります。今、この事件に関する記憶を失った私が、崩壊したロウランを前にして…平静を保っていられる自信がありません。」
「ふむ…」
「ですので、三日、いや…一週間後の今日、また私にお会いしていただけませんでしょうか…」
「それは出来ない。僕らも任務で来ているからね。」
私は息を大きく吐いた。
「木の葉の方々がどうお考えかわかりませんが、記憶を亡くした私と新たに国交を結ぶ方が忍五大国との兼ね合いを揺るがすことになると思いますが。他国への牽制と取られても仕方のないことです」
「僕をおどかすのかい…困ったね。」
「いえ、そういうわけでは…ただ、私はこの事件をただの事件で片付けたくないのです。忘れてはいけない出来事のような気がします。」
「ふむ…わかった。それこそ僕らだけでは判断できないね。一度里へ帰ろう。いいね、チョウザ、シビ」
そう言うと、彼らは一瞬で見えなくなった。
これでいい。時間は稼げた。
絶対忘れたくなんてない。私は絶対忘れない。
3
「…以上が此度の顛末です」
「ふむ…」
「いかがいたしましょう…?三代目」
「ミナトよ」
「は」
「この任務に係る資料の一切を処分せよ。さらに、今の話を聞いたワシと、お前たちの記憶も消すのじゃ」
「…は」
「なんじゃ、理由を聞かぬのか」
「私もそれがよろしいかと思います」
「ふ、さよか」
「…」
「ならば、速やかに頼む」
「チョウザ…シビ…頼んだ」
「「うむ」」
「三代目…やっぱり聞いてもいいですか…?」
「はは、ぬしにも聞かれたくない話があるのか」
「まあ…そりゃあ」
「多重影分身を使い、螺旋丸を操った少年…間違いなく木の葉の忍だったのじゃな」
「はい…そしてあれはおそらく…」
「うむ、お前か、ジライヤの教示を受けておるはず」
「…」
「ワシなぞに意見を聞かずとも、お前の中にすでにあるのではないか?」
「…」
「答えが、の」
言い終わるや否や、風がほんの少し揺れた。
「処分、終了だ」
「はは、意外に早かったね、こっちはまだだよ」
ミナトの顔は、少し悲しげだった。
4
ロウランの復興は苛烈を極めた。
街の大半を占めていた塔は壊され、あるいは龍脈を利用するパイプとされていたため、ほとんどが無用の長物と化していた。
だが、それを全て処理するとなると、とてつもない労力と時間がかかる。
ひとまずは龍脈なしでの生活をどう過ごすか、その方向性の論議から入った。
「私は、ここに残ると言った。皆もそう言った。」
「じゃあ…」
サクラと呼ばれた少女を遮って私は続けた。
「でも、ここはこんなです」
廃墟を見上げながら私は呟いた。
「…」
「私は母様の愛したロウランが大好きだった。皆もそうだった。でも、それでは誰も生きてはいけない。皆それが解っていた。だから、皆でもっともっと話し合ったんです。それ以外の方法を探そうって」
「龍脈の反動ね…」
「そう、人は一度浸かったぬるま湯からはなかなか抜け出せないものです。だから、私は決断しました。」
「ロウランを捨てると」
5
「捨てる…というのは正しくない、かも知れませんね。私たちは何かを失ったつもりは全くありませんから。」
「…」
「私たちがロウランの民であることに変わりはありません。そこに気づかせてくれたという意味でも…ロウランを救った英雄には感謝しています。」
そうして退屈そうにあくびをしているナルトの頭をそっと撫でた。
こんなに小さかったのね。
私も。
よく頑張ったね。
ありがとう。
「…?」
「なぁるぅぅとぉ~?」
「ちょ、サクラちゃんッ!?これは不可抗力だってばよ!!」
今は母子ほども差があるはずなのに、嫉妬してしまう自分に嫌気が差した。
「私も、貫くね。まっすぐ自分は曲げない。あきらめないからね。ナルト。」
大好きだったよ。
「おう!!俺も頑張るから、姉ちゃんも負けんなってばよ!!!」
…。
こんなこと言ったら笑われちゃうかもしれないけど。
ひょっとしたら、私の時間はあの日から止まったままだったのかもしれないね。
あなたにそう言ってもらいたくて、私は流浪の民となることを選んだのかもしれない。
―うん、絶対負けないよ。ありがとう。じゃあ、またね。
やっと、見つけた…
「ナル…ト…?」
彼から預かったチャクラ刀を思わず強く握りしめた。
夢に現れた英雄がロウランを救ったなんて嘘。
あなたが私を救ってくれたんだよね。
ミナトさんの術で記憶を失ったなんて嘘。
全部言いたい。
でも、あなたは知らないね。
忘れちゃったもんね。
「?」
「このあたりで龍脈の乱れを感じました…。我々一族は龍脈の流れを感じる事が出来るんです。」
「へーーーーw姉ちゃんってばすげえってばよw」
姉ちゃん、かあ。20年前は私と同い年くらいだったのにね。
「なぁにデレデレしてんのっ…よっ!!」
「んぐッ」
「少し…昔話をしてもよろしいですか…?」
少しむせながら彼は頷いた。
「お、おう」
「むかしむかしのお話です。まだロウランが栄えていたときのお話。」
私は懐かしくてついついチャクラ刀を撫でていた。
「あれ?その刀…」
彼はしきりに腰のあたりを探していた。
その刀はここですよ、と言いたい。
大事に研ぎ過ぎて、相当小さくなっちゃったけれど。
私は彼に気づかれないよう、柄に刻まれた木の葉の紋を隠した。
2
「さて…君も記憶を消さねばならないね」
「あの…、待って下さい」
「…?」
言わなきゃ、今、言わなきゃ。
「私は女王です。このロウランを復興させる責務があります。今、この事件に関する記憶を失った私が、崩壊したロウランを前にして…平静を保っていられる自信がありません。」
「ふむ…」
「ですので、三日、いや…一週間後の今日、また私にお会いしていただけませんでしょうか…」
「それは出来ない。僕らも任務で来ているからね。」
私は息を大きく吐いた。
「木の葉の方々がどうお考えかわかりませんが、記憶を亡くした私と新たに国交を結ぶ方が忍五大国との兼ね合いを揺るがすことになると思いますが。他国への牽制と取られても仕方のないことです」
「僕をおどかすのかい…困ったね。」
「いえ、そういうわけでは…ただ、私はこの事件をただの事件で片付けたくないのです。忘れてはいけない出来事のような気がします。」
「ふむ…わかった。それこそ僕らだけでは判断できないね。一度里へ帰ろう。いいね、チョウザ、シビ」
そう言うと、彼らは一瞬で見えなくなった。
これでいい。時間は稼げた。
絶対忘れたくなんてない。私は絶対忘れない。
3
「…以上が此度の顛末です」
「ふむ…」
「いかがいたしましょう…?三代目」
「ミナトよ」
「は」
「この任務に係る資料の一切を処分せよ。さらに、今の話を聞いたワシと、お前たちの記憶も消すのじゃ」
「…は」
「なんじゃ、理由を聞かぬのか」
「私もそれがよろしいかと思います」
「ふ、さよか」
「…」
「ならば、速やかに頼む」
「チョウザ…シビ…頼んだ」
「「うむ」」
「三代目…やっぱり聞いてもいいですか…?」
「はは、ぬしにも聞かれたくない話があるのか」
「まあ…そりゃあ」
「多重影分身を使い、螺旋丸を操った少年…間違いなく木の葉の忍だったのじゃな」
「はい…そしてあれはおそらく…」
「うむ、お前か、ジライヤの教示を受けておるはず」
「…」
「ワシなぞに意見を聞かずとも、お前の中にすでにあるのではないか?」
「…」
「答えが、の」
言い終わるや否や、風がほんの少し揺れた。
「処分、終了だ」
「はは、意外に早かったね、こっちはまだだよ」
ミナトの顔は、少し悲しげだった。
4
ロウランの復興は苛烈を極めた。
街の大半を占めていた塔は壊され、あるいは龍脈を利用するパイプとされていたため、ほとんどが無用の長物と化していた。
だが、それを全て処理するとなると、とてつもない労力と時間がかかる。
ひとまずは龍脈なしでの生活をどう過ごすか、その方向性の論議から入った。
「私は、ここに残ると言った。皆もそう言った。」
「じゃあ…」
サクラと呼ばれた少女を遮って私は続けた。
「でも、ここはこんなです」
廃墟を見上げながら私は呟いた。
「…」
「私は母様の愛したロウランが大好きだった。皆もそうだった。でも、それでは誰も生きてはいけない。皆それが解っていた。だから、皆でもっともっと話し合ったんです。それ以外の方法を探そうって」
「龍脈の反動ね…」
「そう、人は一度浸かったぬるま湯からはなかなか抜け出せないものです。だから、私は決断しました。」
「ロウランを捨てると」
5
「捨てる…というのは正しくない、かも知れませんね。私たちは何かを失ったつもりは全くありませんから。」
「…」
「私たちがロウランの民であることに変わりはありません。そこに気づかせてくれたという意味でも…ロウランを救った英雄には感謝しています。」
そうして退屈そうにあくびをしているナルトの頭をそっと撫でた。
こんなに小さかったのね。
私も。
よく頑張ったね。
ありがとう。
「…?」
「なぁるぅぅとぉ~?」
「ちょ、サクラちゃんッ!?これは不可抗力だってばよ!!」
今は母子ほども差があるはずなのに、嫉妬してしまう自分に嫌気が差した。
「私も、貫くね。まっすぐ自分は曲げない。あきらめないからね。ナルト。」
大好きだったよ。
「おう!!俺も頑張るから、姉ちゃんも負けんなってばよ!!!」
…。
こんなこと言ったら笑われちゃうかもしれないけど。
ひょっとしたら、私の時間はあの日から止まったままだったのかもしれないね。
あなたにそう言ってもらいたくて、私は流浪の民となることを選んだのかもしれない。
―うん、絶対負けないよ。ありがとう。じゃあ、またね。
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